“超自主性が強いプロ集団”で「FMT製造のプロになる」 現場経験を活かし未開拓領域を突き進む

MGTx STORYでは、メタジェンセラピューティクス株式会社(以下、MGTx)の各メンバーが、入社のきっかけや事業にかける思いを語ります。今回は、MGTxで腸内細菌叢移植(FMT)の社会実装に向けた製造・品質管理に取り組む、勝間田涼のストーリーです。

勝間田 涼(かつまた・りょう)
メタジェンセラピューティクス株式会社 医療サービス部 製造・品質管理 担当
<経歴> 
北海道大学大学院 水産科学院卒業 修士(水産)。大手食品メーカーにて製造、品質管理、商品開発などを担当後、2022年2月にMGTx入社。 

微生物×ものづくりが進路選択の基準に

幼い頃から動物が好きで、いつしか将来は漠然と水族館で働きたいと思うようになりました。その思いのまま大学では水産学を専攻したのですが、進路選択の時期になると想像以上にその道は狭き門であることを実感し、食品会社への就職を目指すことに方向転換しました。

水産学部で学んだ食品系の学問は、おもに食中毒などの微生物学に関する研究で、私はその中でもとくに微生物が作り出す抗菌ペプチド(タンパク質の一種)の研究に取り組みました。幼少期に読んだ本がきっかけで抱いた微生物への興味関心とリンクする部分も多く、「目に見えないものが人間の身近な生活に影響をしている」ということに、おもしろさを感じました。

就職活動では、食品会社や添加物を扱う会社を受け、結果的に“ものづくり”が好きだったということもあり、製造の仕事ができる大手食品メーカーに就職することにしました。

食品メーカーでの6年間は、工場での製造

そこでの最初の仕事は、流動食の製造でした。工場にて製品の1ラインを受け持つ責任者として、製造・品質管理を担当しました。“濃厚流動食”と呼ばれるその製品は、流通先はおもに病院で、固形物を食べられない高齢者や患者さんに向けて開発されたものです。私が入社した頃は流動食の流通量が多くなった時期で、製造、品質管理に一層の注意を払いながら、新ラインの立ち上げ担当や品質管理責任者として従事しました。

工場での仕事は、遅延や欠品など「トラブル」が致命的な問題となってしまいます。コンスタントに製品を作り続けることが求められるため、大変に感じることも多かったです。一方で、私は「トラブル解決」が好きで、トラブルの原因を探り出し、議論し、改善し、試してみるといったトライアンドエラーを繰り返すことに、やりがいを感じてもいました。

その仕事を約4年続けたのちに、次はバターの製造工場に異動になります。日本でも有数の酪農地帯であるその地域で2年間、家庭用と業務用両方のバターの製造責任者を担当しました。バターの製造工程では“均一化”がとても重要で、この作業がうまくできないと製品の質に大きな影響が出てしまいます。また、酪農家さんの生乳をいかに廃棄することなく製品にするかが最も大切な使命でもありました。雪深く大変な天気の日も生乳の生産は止まらないため、製造ラインを止めることはできません。コンスタントにラインを動かし続けなければいけないというのは、流動食の製造とはまた異なる側面を持ち、とても大変ではありました。

“工場の人”として商品開発を担当

その後、製造から商品開発の部署に異動になります。結果的に4年間、流動食の商品開発を行いました。工場で実際に製造できるレベルまでの商品設計に携わりました。

工場の状況を知っている人材として、製造現場での作業を考慮した商品設計を心がけ仕事に臨みました。そこには、工場時代に経験したトラブルの経験や、新入社員のころからお世話になった工場の人々に「いいものを届けよう」という気持ちが大きく関係していたと思います。

そうして新卒入社してから10年が経ち、次なる仕事を探し始めます。もともと10年間大手で働いたら、もう少し組織の規模が小さい企業に転職することを念頭に置いていました。学生の頃から、大きな組織よりも、意思決定が早くより枠組みに捉われずに動くことのできるベンチャー気質であると自覚していたんです。まずは大手で経験を積み、その後はスタートアップ企業で経験を活かした仕事ができないか探しました。

すべてが運命的に感じた、MGTxとの出会い

学生時代の知人がエージェントとしてはじめに紹介してくれたのが、MGTxでした。私の性格や研究内容などのバックグラウンドを理解した上で選定してくれたのですが、募集要項を見ると「製造」「品質管理」「微生物」と、自分が掲げるキーワードにぴったりハマっていたため、そのすべてが運命的に感じたのを覚えています。

前職時代にすでに腸内細菌や腸内細菌叢移植(FMT)、腸脳相関のことは展示会等のセミナーで話を聞いたことがありました。また、以前体調を崩した際に一時的に過敏性腸症候群(IBS)の診断を受けていたため、自身の体験からも腸内細菌に関心を持っていたんです。さらに、学生時代に微生物の研究をしていたときに、「クラオムセンシング」という“微生物同士の対話”によって起きる現象を知り、当時、いかにして微生物にペプチドをたくさんつくらせるかを考えていた私には、この考え方で研究をさらに進めることができるかもしれないと心が踊った記憶がありました。腸内細菌叢という多種多様な腸内細菌たちの集団に、何か大きな可能性を感じました。

そして、自分の興味関心やこれまでの経験と合致したこの出会いを直感的に感じ、転職活動をほとんどせずに入社を決めました。

「プロ」への“憧れ”を“現実”に

「このメンバーでできなかったら、日本で誰もできない」。これは代表の中原がよく口にしている言葉です。これまで腸内細菌研究の成果を上げてきた福田、山田、石川という世界的な研究者を筆頭に、それぞれの分野で経験を積んだメンバーが集まっているこの環境で仕事ができること自体に、とてもやりがいを感じています。

MGTxで私は主に、腸内細菌叢溶液の製造・品質管理を担当しています。ドナーさんから提供いただいた便から腸内細菌叢溶液の製造・管理をしたり、ドナーさんの検査対応や基準作り、またFMTのさらなるエビデンス取得のための基礎実験を行ったりという業務内容です。自分の業務に責任感と考えをしっかり持ちそれぞれお互いに議論し合うことができ、まだ誰も成し遂げていないことをこの世界で形作っていくことが圧倒的に楽しいです。

祖父が大工だったことや学生時代に起業した知人がいた影響で、ずっと「プロフェッショナル」に憧れがありました。こうして今、FMTという未開拓の領域で自分自身が製造品質管理のプロとして経験を重ねていけることは、とてもモチベーションにつながっています。プロというのは、単なるこだわりを持つだけでは不十分で、“客観的に価値のあるものを作り多くの人々に認められること”が大事だと考えています。前職で培った製造現場での「工程を細分化して一連の流れをうまく動かす」経験を存分に活かし、FMT製造のプロになるべく邁進していきます。

人々のQOLを高めるために

MGTxの強みはなんと言っても、「超自主性が強いプロ集団」という点に尽きると思います。それぞれが高いプロ意識を持ち、日々目標に向かって活動しています。これから入社を希望する人にも、強い自主性を持ってほしいと感じます。また、プロに囲まれて仕事をすることになるため、“プロになりたい人”がメンバーとしてのイメージに合っているかなと思います。私も入社当時は「プロじゃないと自分が浮く」と思いました(笑)

これまで食品メーカー勤務ではありましたが、長く携わっていた流動食は「薬」に近い存在でした。私の扱っていた流動食の主な流通先は病院であり、分類としては食品ですが薬として扱われている経腸栄養剤とほぼ同じ組成だったんです。そのため、異業種からの転職にそこまで抵抗はありませんでした。

ずっと、“人々のQOLを高める仕事をしたい”という気持ちを強く持っていました。今はFMTをいち早く患者さんのもとに届けたいという一心で、FMT製造のプロとして社会実装を目指していきます。